(おそらく)日本で、いや世界で一番 山本禾太郎著「小笛事件」を読み見返しているであろうわたくしですが、何がそんなに…と言われたら確かに何でそんなに…と自分でもよくわからない戸惑いがあったりします。
現実にあった事件を題材に構成、いわゆる犯罪小説ってやつですが数ある探偵小説の中でもズバ抜けて面白く、短編というより中編ほどの長さがあるのに読んでると夢中になって時間がすぎるのがあっという間でおわす。
いや何度も読んでオチわかってるだろと自分で自分にツッコミ入れるのですが、筋トレしたら腹が減るように唐突に昭和探偵的なものが足らない!><と感じると自然にその甘美な世界に帰っていくのでありました。どぎつい写真や事件場所の見取り図や死因の図解説明なども奇妙で恐しく不可解な事件の顛末を盛り上げてくださいます。
初めて読んでからもう相当な年月が立ちますが、あまりにも何度も読み返しているせいで、該当ページだけがなんかこうヘロヘロで飲み物染みとかあったりシワったり中古本でこういうのにあたってしまうと嫌な気持ちになるであろう状態でございます。
作中ほとんど事件の謎は解けてスッキリ…と言いたいところですが、唯一納得できない点もあります。〈なぜ小笛は幼き大月の子供二人を殺したか〉ってとこですね。
弁護士の高山氏があえてその部分を個人の道義的観念から口外しなかったものと察せられる、的に書かれてるからなんとなくわからないでもないのですが。
いやわからん。わからんよ!もう全然わからん。わからな死にするくらいわからん。
ちなみにお話の内容は収録されている創元推理文庫「日本探偵小説全集11 名作集1」の背表紙に書かれている文章を引用させていただきます。
“女性ばかり四人の死体が京都市内の長屋で発見された。検査の結果、女主人とその娘、それにかつての下宿人との三角関係が明らかになった。殺人か、それとも子供を道連れにした心中か。現実に起こった事件を、綿密な取材をもとに再構成した山本禾太郎の傑作長編『小笛事件』ほか、岡本綺堂、谷崎潤一郎、海野十三、水谷隼、城昌幸の秀作を集めた。”
つか他にも大好きな 渡辺温・渡辺啓助兄弟、菊池寛、佐藤春夫などの傑作短編も収録されていて、この巻だけでなくこの全集は一家に1セット、いや家族それぞれ(猫や犬含め)が1セット持ってても全然不思議ではない探偵小説への入門案内書と言えるべき素晴らしい全集だと思います。つかまだ売ってんのかな。
あと入手しやすいという意味で光文社文庫のミステリー文学資料館編 甦る推理雑誌シリーズなんかもオスーです。
さらに余談なのですが最近知りました ゆまに書房さんから『ぷろふいる』の復刻版全12巻が出てる事を。
しかももう10年前に出てるし!しかも揃定価が316,800円
いちじゅうひゃくせんまん。む。たっか!! しかし復刻版だから!と言われたらあーそうっすね、と納得せざるを得ないのでありました。さんじゅうまんあったらXSXが5台買えるなあ(まだ発売されてないし→価格すら発表ないし)
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